メタロ-β-ラクタマーゼ産生緑膿菌のバイオフィルム形成能および分子疫学的解析

2009 
A県3施設で2001年から2006年の6年間に入院患者より分離されたメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生緑膿菌123株のバイオフィルム形成能と薬剤耐性状況を検討し,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による分子疫学的解析を行った.材料別内訳は,尿79株,喀痰10株,便10株,膿5株,血液2株,その他17株であった.123株中,106株(86.2%)がイミペネム(IPM),シプロフロキサシン(CPFX),アミカシン(AMK)の3剤に耐性を示す多剤耐性緑膿菌(MDRP)であった.バイオフィルム高度形成群(OD570≧1)は29株(23.6%),中等度(1>OD570≧0.5)47株(38.2%),低度(0.5>OD570≧0)47株(38.2%)であった.123株のバイオフィルム形成能の平均OD570値は0.71±0.04 (mean±SE)であり,比較対象として用いたMBL非産生緑膿菌122株の0.28±0.04よりも有意に高い形成能を示した.バイオフィルム高度・中等度形成群76株のうち,MDRPは71株(93.4%)で,尿由来株は57株(75.0%)であった.MBL産生緑膿菌123株のPFGE解析において同一株はなかったが,類似係数85%の株を12組認めた.分離日は同日ないし4日から約3ヶ月の隔たりがあった.バイオフィルム形成能が高い菌株は環境中に長期に生息する可能性が高い.MBL産生緑膿菌やMDRPの伝播・拡散防止のためには,徹底した標準予防策の実施とバイオフィルムを形成させないための医療・療養環境の管理が重要である.
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