多発肺転移を有するPerformance Status不良右乳癌患者に対してTrastuzumabにより長期にわたり病勢コントロールが可能であった1 例

2012 
症例は60 歳,女性。55 歳時に脊髄小脳失調症と診断され,進行する神経症状のためperformance status(PS)2〜3 の状態。来院時右乳房に皮膚浸潤を伴う4 cm大の腫瘤および右腋窩リンパ節腫大を認め,乳腺針生検にて浸潤性乳管癌・硬癌(ER 中等度陽性,HER2 2+,遺伝子増幅あり)と診断。造影CT 検査にて両側肺野に最大1 cm大の結節影を計6 個認め,また骨シンチグラフィにて右坐骨転移を認めた。脊髄小脳失調症にてPS 不良であることを考慮しanastrozole によるホルモン療法で治療を開始したが,原発巣・肺転移巣ともPD のためtrastuzumab 投与を追加したところ原発病変は引き続きPD の状態であり,肺転移巣は縮小傾向でSD の状態となった。その後capecitabineも追加投与しSDを維持したが,治療開始後18 か月目よりPD となり,最終的に多発肺転移による呼吸不全により治療開始後33 か月目に永眠された。病理解剖の所見では,原発巣のHER2 発現量スコアが1+に対して肺転移巣では2+であり,原発巣と肺転移巣の間でHER2 発現量の差を認めた。本例のように原発巣と予後を決定する転移巣の間でHER2 発現量の差を認める場合にtrastuzumab の薬剤効果が期待できる場合があり,PS 不良例でもADL を維持しつつ30 か月以上病勢コントロールが可能であった症例として価値があると考えられた。
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