Spread of Spinal Anesthesia
1995
クモ膜下腔内での麻酔薬の広がりを推測するために,脊椎管のミエログラフィー時の造影剤の広がりを検討した.腰痛症47名の患者を対象とし,水平なX線透視台上で左側臥位で22G針にてL 3-4間を穿刺し,3mlと10mlの造影剤を5~40秒間に注入し,10分後に検査目的に撮影した脊椎のX線写真よりretrospectiveに造影剤の広がりを観察した.3mlの造影剤を平均5.4秒で注入した群(A群:平均0.56ml/sec, n=5)での造影剤の上昇レベルは平均Th 7.2であった.造影剤3mlを平均11.3秒で注入した群(B群:平均0.27ml/sec, n=15)では平均Th 10.3の上昇レベルであった.造影剤3mlを平均20.2秒で注入した群(C群:平均0.15ml/sec, n=12)では平均Th 10.8の上昇レベルであった.造影剤10mlを平均40.1秒で注入した群(D群:平均0.25ml/sec, n=15)の上昇レベルは平均Th 8.0であった.注入量が同じときには,注入速度の速いA群は遅いB群・C群に比して造影剤の上昇レベルが高かった.一方,注入速度が同じときには,注入量の多いD群は少ないB群に比して造影剤の上昇レベルが高かった.しかし,注入速度が速くて,注入量の少ないA群と比してほぼ同じ上昇レベルであった.以上より,注入量と注入速度が造影剤の上昇レベルを決める因子であることがわかり,脊椎麻酔では局麻薬の注入量と注入速度について慎重な配慮が必要であると示唆された.
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