前壁中隔心筋梗塞における胸部誘導でのinitial r wave出現の意義
1988
心筋梗塞慢性期に梗塞領域に出現したr波の臨床的意義を検討した.前壁中隔心筋梗塞患者30例に心臓核医学検査を急性期と慢性期に行い, 心機能および心筋血流の変化とr波出現との関係について調べた.また, 冠動脈造影所見よりその成因について考察した.r波が胸部誘導の2ヵ所以上の誘導で出現した場合, 左室駆出率と壁運動に明らかな改善を認めた.またこの場合, 梗塞範囲は小さい傾向にあると考えられた.r波が発症より2ヵ月以内に出現した群では, それ以降にr波が出現した群に比して, 心筋血流の改善率が良かった.r波出現の成因としては, 冠動脈造影所見から側副血行路の存在あるいは再開通が関与していると考えられた.よって, 心筋梗塞の慢性期におけるr波出現は, 心機能の改善を示唆するための良い指標となり得るものと考えられた.
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