地理学者がおこなう「真正な実践」の解明 : 地理教師による教材研究のための地理学論文の読み解きに示唆するもの

2015 
本研究は,専門科学者がおこなう「真正な実践」の解明に向けたシリーズ研究のうち,知識の社会領域の中でも地理学者の研究に注目し,「地理学者ならではの学びの過程とはどのようなものか」「その過程は,地理教師が教材研究のために地理学論文を読み解く上でどのように活かすことができるか」を解明することを目的とする。そのために,地理学論文の構成・構造分析と論文著者へのインタビューをもとに,地理学論文が執筆されるに至る経緯とその背景を分析する。本稿では,現代インドの地域研究の成果を発信した地理学論文「経済成長下のインドにおけるヒマラヤ山岳農村の変貌―ウッタラカンド州の事例―」(岡橋ほか,2011)と,その筆頭著者である地理学者・岡橋秀典を研究対象とした。結果,論文が完成するまでの過程は「研究デザインの構築」「実地調査の準備と実行」「省察と意義付け」「地域像のフレームワークの精緻化」「執筆」という5段階から構成されること。論文執筆の過程にあるミクロな地理学者らしい学びとして,「フィールドと協力者に学ぶ」「データに学ぶ」姿勢があること。論文執筆の背後にあるマクロな地理学者らしい学びとして「他の研究者に学ぶ」「自らの経験に学ぶ」姿勢があること,が明らかとなった。最後にこれらの成果をふまえて,地理教師が教材研究のために地理学論文を読み解く上で重要な視点や方法として,「論文題目や章・節のタイトルに注目する」「解釈が生まれてくる根拠(エビデンス)とその集め方に注目する」「参考文献や註釈・特記事項に注目する」「論文の背後にあるコンテクストに注目する」の4点を提案した。
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