ポリ-L-乳酸を用いた薬剤溶出生体分解吸収性ステントの開発

2016 
金属製の薬剤溶出性ステントは、薬剤溶出後も恒久的にステントが体内に残存するため、ステント血栓症や留置部位での過剰な炎症反応・新生内膜増殖等が誘発される恐れがある。 本研究では、生体安全性及び生体適合性に実績のあるポリL-乳酸(PLLA)製の生体分解吸収性ステントを用い、再狭窄抑制効果のあるパクリタキセル(PTX)と組み合わせ、体内に恒久的に残らないPTX溶出生体分解吸収性ステントの開発を目標とし、ステントへの薬剤担持方法及び薬剤放出挙動について検証した。 本研究により、PLLA製の生体分解吸収性ステントにPLLAをバインダーとしてPTX/PLLAコーティングにてPTXを担持させた場合、多数の空孔を有する層が形成され、これにPTXを含浸させると薬剤担持量は増大した。空孔率はPLLAの分子量の増大と共に小さくなる傾向を示し、薬剤の放出速度もそれに伴い低下した。また、熱処理を施したところ、PLLAの結晶化が促進され、薬剤の放出は著しく低下した。 PTX/PLLAコーティングにてPTXを担持させる手法において、PLLAの分子量及び熱処理条件により徐放性の制御が可能であり、PTX/PLLAコーティングは中長期のPTX徐放に適していると言える。一方、PLLA製の生体分解吸収性ステントに結晶種となる微細なPTX結晶を付与(シーディング)し、その結晶を核として結晶成長させPTXを担持させる手法は、PTX担持量も多く、ステント表面で安定に固定化されていた。生体分解吸収性PLLAステント表面にPTXを安定して担持させるためには、シーディングと結晶成長の両者を施すことが必要であることが確認され、短期のPTX徐放制御に適している。 本研究においてPTX/PLLAコーティング、シーディング及び結晶成長によって、PTX担持量およびその担持形態を調節することにより、再狭窄を抑制する効果と豚腸骨動脈の血管組織によるステントの被覆がなされ、ステント留置後安全に血管組織内で分解吸収され得ることが示唆された。
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