Pathogenesis of Renal Insufficiency Complicating Hepatitis A Infection -A Clinical Study of 6 Cases-
1994
A型肝炎に伴う腎障害の発症には,B型肝炎同様,免疫複合体の関与が強く想定されているが,いまだ明らかではない。その腎障害の原因を解明するため,prospectiveに臨床的,組織学的および免疫学的検討を行った。対象はA型肝炎の経過中に腎不全の基準を満たした6例(男性6例,平均年齢36.3歳)である。各症例とも急激に肝炎を発症し,初発症状出現から4~8日(平均5.6日)目に近医より搬送された。来院日には全例すでに腎不全状態であった(血清クレアチニン3.9~19.0mg/dl, FENa 5.4~13.9)が劇症肝炎に至った症例は1例のみであった。また高ビリルビン血症,レニン-アンギオテンシン系ホルモンの亢進,高尿酸血症はほぼ全例に認められたが,エンドトキシン血症やDICの合併例はなかった。入院後の経過として,2例に血漿交換が施行され,また4例には血液透析の施行を一定期間必要としたが,各症例とも肝機能は急速に正常化し,腎機能も来院から1ヵ月以内にほぼ回復した。腎生検施行例は5例であり,第12~38病日(平均第24.2病日)に施行された。腎組織像では,糸球体変化はきわめて軽度であり,PAMおよびPAS染色法にても係蹄の肥厚はまったく認められなかった。これに対し,尿細管変化は全例著明であり,急性尿細管壊死またはその回復所見が観察された。免疫学的検討では,免疫複合体は全例陰性であり,明らかな補体低下を来した症例もなかった。蛍光抗体法による免疫グロブリン,補体,フィブリノゲンの腎組織への沈着はまったく認められなかった。以上,腎機能の急激な増悪と速やかな回復という臨床経過と組織学的および免疫学的所見より,自験全例において腎障害は尿細管壊死による可逆的な急性腎不全であったと結論した。また,免疫複合体の関与は証明し得なかった。
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