[A study on surface roughness of the normal and pathologic gingiva (author's transl)].

1973 
口腔粘膜疾患の視診所見を客観的定量的に記録表示し, 経時観察あるいは各種疾患の比較観察を可能ならしめるために, 表面粗造性の間接測定法を考案採用した。まず口腔粘膜の表面形態の再現方法および測定方法を検討し, さらに健康歯肉, 健康顎堤粘膜ならびに歯肉, 顎堤粘膜の各種疾患に応用し次の知見を得た。歯肉, 顎堤粘膜の表面形態再現方法としてはシリコーンラバー印象材にて無圧印象し, 超硬石膏を注入して模型を作製する方法が最も優れていた。再現した石膏模型の表面粗造性測定法は, 病変部ではミクロン深さ高さ測定機KY-30型によるのが, また健康部では万能投影機6C型光切断表面アラサ検査装置によるのが最適で, その精度は十分に優れていた。口腔粘膜の表面粗造性は最大高さ法 (Rmax) にて表示した。成人20名の健康歯肉の表面粗造性は男女差を認めず, 部位別では上顎前歯部唇側歯肉が有意差をもって表面粗造で (33.1±24.8μm) , 下顎前歯部唇側がこれに次ぎ, 他はほとんど同様の値を示した。また女児の上顎前歯部唇側歯肉は成人同部に比し有意差をもって表面粗造性の値が小さく, より平滑であった。16名の健康無歯顎顎堤粘膜の表面粗造性も健康歯肉とほぼ同様の傾向がみられ, 値はやや小さかった。早期の扁平上皮癌患者6症例の病巣部の表面粗造性値は最小症例279±118μmより最大症例1176±400μmまでみられ, 視診型の肉芽型および乳頭腫型は表面粗造性が大で, 白板型はやや小さい値を示した。白板症14症例の測定値は癌腫よりも小さく最小症例123±36μm, 最大症例358±164μmで, 初期白板症は平板型および疣型白板症よりも小さい値を示した。扁平苔癬5症例の測定値は白板症よりも小さく, 最小症例52±20μm, 最大症例95±34μmで, 網状型は線状型にくらべ, より粗造な傾向がみられた。癌腫, 白板症および扁平苔癬の測定値の間には有意差が認められ, 癌腫が最も表面粗造で, 次いで白板症, 扁平苔癬の順であった。本研究に採用した表面粗造性の間接測定法は患者に対する負担を少なくし, 経時的計測を可能ならしめ, さらに表面粗造性の数量化は病変の客観的比較を可能ならしめ, 口腔粘膜疾患の表面形態にもとづく臨床診断ならびにその推移の比較観察に役立ちうると考える。
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