A case of diabetes mellitus with severe autonomic neuropathy and hypoxic depression

1985 
例は28才の男性で, I型糖尿病患者である.経過13年にわたり不定期であるがインスリン治療を続けていた.右下肢の血栓性静脈炎を発症し当科に入院した.入院時に糖尿病性眼症(Scott Vb),糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害などの合併症を認めた.なかでも,起立性低血圧,神経因性膀胱,インポテンス,筋緊張性瞳孔などの自律神経障害が著明であつた.また,脳CTスキャンで脳皮質・脳幹部に萎縮所見を認めた.入院中に血栓性静脈炎が原因と考えられる肺塞栓症を突然発症した.また第37病日に低血糖症状にひきつづいて心停止がおこつた.高度の自律神経障害のある糖尿病患者に突然心停止のおこることは最近注目されており,原因は心臓を支配する自律神経の調節失調と推定されている.本症例でも心血管系に基礎疾患を認めないことより,この心停止は高度の自律神経障害のあるためにおきたと考えた.炭酸ガス濃度を一定にした条件下で吸気の酸素濃度を低下させると,この患者は正常成人とは反対に換気量が減少した.この現象をhypoxic depressionという.このためにこの現象をもつ人にとつて,心不全や呼吸不全などの低酸素血症に陥りやすい疾患は致命的である.また高度の自律神経障害をもつ糖尿病患者は, hypoxic depressionを合併している可能性があるので,重篤な糖尿病患者の治療の際には呼吸状態の観察も重要であると思われる.
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