1-メチル-2(1H)-ピリジンイミンの基底状態と励起一重項状態における分子構造とその電子的性質に対する考察

2001 
基底状態ならびに励起状態における1-メチル-2(1H)-ピリジンイミン(1MPIと略)の最適構造を知るためにRHF/6-31 + G(d)法ならびにRCIS/6-31 + G(d)法を用いた計算を行った.また,B3LYP/6-31G(d,p)法を用いて基底状態の最適構造を計算した.その結果,以下の結論を得た.(1)基底状態では1-MPIは平面構造をとる.(2)最低励起一重項状態ではC=NH基の炭素原子C3とその反対側の炭素原子C7を結ぶ線を軸として,環をねじった構造が平面構造より安定である.平面構造と,このねじれた非平面構造とのエネルギー差は0.34 kJ mol−1である.(3)最低励起一重項状態はπ,π*性で,この状態と第二励起π,π*一重項状態の間には三つのn,π*一重項状態が存在する.(4)最低励起π,π*一重項状態は非平面性のために,純粋なπ,π*性を失い,n,π*性が混じった状態となる.したがって,隣接する一重項や三重項状態との間の相互作用が容易で,最低励起π,π*一重項状態に接近したn,π*一重項状態との近接相互作用が可能である.これらの相互作用のために,最低励起一重項状態の無輻射失活が促進され,蛍光量子収率が非常に小さくなると考えられる.(5)1MPIのC=NH基のH原子は環N原子に対し,トランス配置が安定である.トランス-シス異性化反応に対するポテンシャル障壁の高さを上述の方法で計算した結果,基底状態よりも最低励起一重項状態において異性化が起こることが考えられる.濃度変化ならびに光照射した1MPIのIRスペクトルからは,少量のシス型の存在が示唆された.(6)最低励起一重項状態における1MPIの分子構造の変化の程度は,2-ピリドンおよび1-メチル-2-ピリドンの構造変化と比べて小さい.この結果はこれら三者の蛍光スペクトルの振動構造の形状が,1MPIと残りの二者のそれと異なることと関係している.
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