歯周病と糖尿病に関する疫学的研究 : 歯科的所見と糖尿病診断,空腹時血糖値,治療法との関係

2002 
歯周病と糖尿病の関係を把握する一助として, 歯周病患者を対象に口腔内所見と糖尿病の状態について調査した。本研究の対象となったのは, 愛知県歯科医師会が平成11年に実施した歯周病と糖尿病に関する疫学調査において, 本調査の実施に対して同意し, 糖尿病の有無に関する診断が得られた30~69歳の男女 (平均年齢54.3±9.0歳) 601名である。また対象者のうち, 糖尿病もしくは境界域と診断され, 空腹時血糖値 (FPG) の得られた136名 (平均年齢57.3±7.6歳), 同じく糖尿病の治療方法に関する情報が得られた190名 (平均年齢57.3±8.2歳) を対象として, 血糖値コントロールの状態や糖尿病の治療法と歯の状態および歯周病所見との関連性について検討した。その結果, 糖尿病群では正常群に比べ, 現在歯数が少なく歯周病所見もより悪化していた。しかしながら, 糖尿病群および境界域群において, 調査時におけるFPGと現在歯数および歯周病所見とは必ずしも関連していなかった。糖尿病の治療法別では, インシュリン注射あるいは内服薬を服用している群は, 食事指導・運動指導のみの群に比べ, 血糖値コントロール状態の良否によらずプロービングポケットデプスの平均値が小さく (p<0.01), 動揺度でも同様の傾向が認められ, 歯周組織の状態が良かった。すなわち, インシュリン注射ないし内服薬による糖尿病治療は, 歯周病による歯周組織の破壊を低減させる効果をも持つ可能性が示唆された。
    • Correction
    • Source
    • Cite
    • Save
    • Machine Reading By IdeaReader
    20
    References
    1
    Citations
    NaN
    KQI
    []