Spleen-Preserving Operations for Blunt Splenic Trauma

2000 
脾損傷手術における脾温存術の適応,術式を明らかにすることを目的に,自験開腹手術例56例を対象に合併損傷,開腹手術適応,損傷形態(日本外傷学会脾損傷分類による)と術式,合併症および死亡につき臨床的に検討した。脾温存手術としては,圧迫止血術,縫合術,部分切除術を適用した。脾温存群と脾摘群の間で,合併損傷,開腹手術適応に有意差を認めなかった。損傷形態と術式の検討では,I型は1例で無処置であった。II型は3例で,すべて圧迫止血術が施行された。IIIa型は8例で,4例に圧迫止血術が,4例に縫合術が施行された。IIIb型は3例で,2例に部分切除術が,1例に脾摘除術が施行されたが,脾摘除術を要した症例は脾門部血管損傷合併例であった。IIIc型は最も多く27例で,1例に縫合術が,14例に部分切除術が施行され,脾摘除術は12例に施行された。部分切除術14例中の3例は,さらに縫合術が付加された。IIId型は10例,IV型は4例ですべて脾摘除術が適用された。I~IIIc型群はIIId・IV型群に対し,有意に温存率が高かった。IIIc型群とIIId・IV型群でもIIIc型群が有意に温存率が高かった。開腹術全体における脾温存率は51.8%であり,I型からIIIc型までは温存手術が可能であった。術後合併症として部分切除術後の1例に後出血を認め,再手術が施行されたが,脾臓は温存可能であった。また脾摘除術後の1例に,術後1年7か月にStaphylococcus aureusによる敗血症を認めた。死亡例は7例(12.5%)であったが,脾損傷が死因であった症例はなかった。合併症発症率,死亡率ともに脾温存群と脾摘群で有意差を認めなかった。脾温存手術の適応はI型からIIIc型までの症例であり,IIIa型までは縫合術を,IIIb・IIIc型には部分切除術を積極的に取り入れることにより,温存率は上昇するものと思われた。
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