カルシウムの積極的な服用による腎臓結石予防法・活性吸収型海草カルシウム (AAACa) の尿中蓚酸排泄抑制作用機序
2000
従来, カルシウムの過量摂取は尿中カルシウム排泄増加をきたすため, 腎臓結石形成の危険因子のひとつであると, 漠然と考えられてきた. しかし, 近年, カルシウム摂取が結石の発生を抑制するという一見逆説的な報告がみられる. この機序の詳細は不明であるが, カルシウムが消化管内で蓚酸と結合して蓚酸の吸収を阻害している可能性が考えられている. このため, カルシウム摂取の蓚酸代謝に与える影響と結石形成抑制作用との関係を明らかにする必要があると考えた. 9名の健常者 (男性4名, 女性5名, 23~49歳) を対象として, クロスオーバー法により3日間連続で夕食直後に800mgのカルシウムを健康食品である活性吸収型海草カルシウム (AAACa), および炭酸カルシウム (CaCO3), プラセボを経口的に服用させ, 翌日早朝安静第一尿を3日間連続採取した. これらのカルシウムと蓚酸, 浸透圧, クレアチニン濃度を測定し, 更に鏡検で尿沈渣中蓚酸カルシウム (CaOx) 結晶の析出状態を観察した. その結果, 800mgのカルシウムの経口摂取後, 翌日の早朝第一尿中のカルシウム排泄は, コントロールに比べてAAACaおよびCaCO3共に増加した. AAACa服用群の尿中蓚酸値はコントロール, CaCO3に較べ有意ではないものの低値を示し, また, CaCO3とコントロールでは, 尿中蓚酸排泄量に差は認められなかった. CaCO3服用では, コントロールに比べて尿沈渣中蓚酸カルシウム結晶析出率が高くなる傾向が認められたが, 有意差はなかった. 一方, AAACaではこのような傾向は認められない. AAACaは溶液中でのイオン化率が高いため, ヒト腸管から吸収されやすいと共に, 腸管腔内で蓚酸と結合して, 吸収され難い沈殿を形成すると考えられる. すなわち, AAACaは他のカルシウム素材よりも更に腎臓結石の形成を誘発するリスクが低いのみならず, 却ってこれを予防しうる可能性が認められた.
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