Application of biomass-derived lignophenol to epoxy resins
2010
相分離変換システム法により,天然リグニンから精密な分子設計のもとに誘導されるリグニン系新素材であるバイオマス由来リグノフェノールのエポキシ樹脂への適用可能性を検討した.リグノフェノールのエポキシ化は,エピクロロヒドリン,テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB),NaOH による二段階エポキシ化反応にて行った.塩酸ジオキサン法により得られたエポキシ化リグノフェノールのエポキシ当量は 230~250 g/eq となり,また汎用の有機溶媒への優れた溶解性を示した.エポキシ樹脂としてエポキシ化リグノフェノール(ELP)と,石油由来のビスフェノール A ジグリシジルエーテル(DGEBA)または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3′,4′-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ECEC)との混合樹脂,硬化剤としてリグノフェノール(LP),硬化促進剤として 1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)を用いて硬化物を作製した.エポキシ樹脂中 30 wt%の ECEC を混合した硬化物 ELCL(70)でガラス転移温度(Tg)が 219℃ を示した.これは,石油由来のフェノールノボラック(PN)を硬化剤とし,DGEBA をエポキシ樹脂として利用した汎用のエポキシ樹脂硬化物(Control)より 85℃ 高い値であった.さらに,エポキシ樹脂中 60 wt%の DGEBA を混合し,化学的耐熱性の向上を狙った硬化物 ELBL(40)では,200℃ に近い Tg を示すとともに,10%熱重量減少温度が 379℃ と熱的に安定であった.硬化物の IR 測定において,910 cm-1 のエポキシ基由来の吸収帯が消失していることから,LP のヒドロキシル基が ELP のエポキシ基と十分に反応していることが示唆された.また硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,Control と比較して,室温での貯蔵弾性率の上昇,および架橋密度の上昇が観察された.以上の結果より,LP は樹脂硬化物の主剤となるエポキシ樹脂として適用可能であり,最大で 82 wt%のリグノフェノールを含むエポキシ樹脂硬化物が作製できることが示された.
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