N, N'-ジサリチリデン-o-フェニレンジアミンの電子構造
1997
N,N'-ジサリチリデン-o-フェニレンジアミン(以下H2(saloph)と略記)の電子吸収スペクトルをシクロヘキサンおよびエタノール中で測定した.シクロヘキサン中においてH2(saloph)は,372,339.6,269.8,262,231.2および209.8nmに吸収帯を示す.これらの帯に対応する帯は,延伸PVA膜中14Kでは,384,331,272,251,220および210nmに観測される.このうち,分子の長い方向に分極した384および272nm帯は,それぞれS0からS1およびS7への遷移に帰属され,210nm帯はS0からS15およびS16への遷移の重なりによるものである.また,分子の短い方向に分極した331,251および220nm帯はrそれぞれS0からS2,S8およびS14への遷移に帰属される.なお,実測の384,272および220nm帯の起源となる電子遷移には,分子の面外方向に分極した成分が含まれている.シクロヘキサンのような無極性媒体中では,H2(saloph)はエノール-イミン型として存在する.一方,エタノールのような極性媒体中では,その一部がケト-アミン型になり,ケト-アミン・エノール-イミン互変異性平衡混合物として存在する.X線構造解析によると,H2(saloph)は結晶状態でvanderWaals二量体を形成している.固体状態の電子スペクトルにおいて現れる新たな帯(〓490および443nm帯)は,二量体形成に基づく分子間相互作用によるものである.
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