心不全研究の歴史的変遷− Harveyから再生医学まで,400年の沿革

2010 
近代循環器学は17世紀になって,William Harveyが血液循環と心臓の機能をはじめて明らかにしたことからはじまった.18世紀になると解剖学が発展し,不全心の形態と病状との関係が注目され,負荷による心肥大の発生と心不全病態の解明が心不全研究の大きなテーマとなった.19世紀には生理学が大きな飛躍を遂げ,心機能を調節する古典的な法則が確立された.20世紀になると心血管系の調節にかかわる体液因子の研究が盛んに行われるようになった.特に心臓の挙動の神経性調節,交感神経系の心不全病態への関与,レニン−アンジオテンテンシン系の発見と心血管系疾患のかかわりなど,現在の心不全の概念の根底をなす研究が続々と行われた.それらに基づいて,新しい心不全治療薬の開発が続いた.20世紀終りは特に学問の潮流が生理学から生物学にシフトしていった時代であり,分子レベルにおける心不全の機序が解明されてきた.そして21世紀になって,新しい心不全再生医学の扉が開かれようとしている.
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