Thermal Analysis on Unorientated Film of Isotactic Polypropylene

1967 
イソタクチックポリブロピレン無配向フィルムの熱処理物をDifferential Scanning Calorimetry (DSC) によって熱解析し, 微細構造の熱処理による変化を解明するのを目的とした。分別物4種 (粘度平均分子量, Mv=8.2×104~4.7×105), 未分別物 (Mv=3.2×105) およびきわめて低い分子量物 (Mv=3.9×103) を熱ブレス法で面内無配向フィルムに成形し, これを試料とした。なお, 試料のo-ジクロルベンゼン (150℃) 溶液の高分解能核磁気共鳴スペクトルからミクロタクチシティが分子量に無関係にほぼ一定であることを確かめた。熱処理方法として, 1) 試料を徐々に加熱して所定温度に到達後急冷する方法 (昇温法), 2) 所定温度から室温まで徐冷する方法 (降温法), 3) 一定温度で加熱後急冷する方法 (等温法) の三つを用いた。熱媒体としてなたね油を用いると, 熱処理温度の上昇につれて油がフィルム内に吸収され, 試料の結晶化度が熱処理によって増加すると, 逆にフィルムから滲出される。ただし, 油の吸収は試料の融点低下を引き起こさないし, 融解熱にも影響しない。試料のもつ微細構造を融解直前までなるべく変化させず, その上, 測定時における感温部と試料との間の温度差を無視できる昇温速度 (DSC解析の際の) はポリブロピレンでは3~5℃/minである。DSCの融解曲線 (DSC曲線) から, 融解開始温度Tm1, 融解速度が最大となる温度 (ピーク温度) Tm2, 融解終了温度Tm3を決定した。Tm3は示差熱曲線のピーク温度にほぼ一致した。さらに十分結晶化が進んだ試料のTm3はディラトメトリーによって得られる融点ともよく一致した。分子量8×104以上ならば, Tm2, Tm3は150℃以下の熱処理によっては変化しない。150~170℃熱処理によってTm2, Tm3は高温にずれた。一般には160~165℃熱処理物が最高融点を与える。分子量が103程度ならば, 最高融点を与える温度は約10℃低温にずれる。分別物は未分別物よりも融解温度幅が狭くなる。特に, 最高融点をもつ熱処理物 (分別物) は非常に狭い温度域で融解する。150℃以上の等温熱処理において, 融点 (Tm2, Tm3) が処理時間とともに高温にずれ, ついで平衡値に近づいた。70℃以上160℃ (場合によっては150℃) 以下で熱処理されたフィルムのDSC曲線は低温融解ピークをもつ。このピークは熱処理方法, 加熱媒体, 処理時間, や試料の分子量とその分布に全く無関係にポリプロピレンフィルムの上記熱処理条件に伴って発生した。低温ピーク温度は熱処理温度よりも数℃高温値をとる。低温ピークは, 低立体規則性度部分の融解, スメチカ晶の融解, β変態の融解, 熱測定時の分解, 融解直前の無配向化などに原因しない。熱処理によって新しく形成された結晶領域のうち, 熱安定性がきわめて悪い (したがって, 構造の不規則な) 部分の融解が低温融解ピークとして観測される。この結晶領域も高度にイソタクチック分子鎖からなり, 単斜晶系である。
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