Polymerization of methyl methacrylate initiated by sex hormones.

1986 
性ホルモン類のラジカル反応性および生体外での機能を調べる一手法として,プロゲステロン(Pro), テストステロン(Test)などの種々の性ホルモン類およびProの近縁化合物である11-ケトプロゲステロン(Kpro)を用いるメタクリル酸メチル(MMA)の重合について研究した。いずれのホルモンもそれ単独では重合を開始しないが, 微量の塩化鉄(III)の添加により, Pro, TestおよびKproが重合開始能を発揮することを見いだした。これらの二元系による重合の全活性化エネルギー(Ep)はそれぞれ48.9kJ・mol-1(Pro系), 57.3kJ・mol-1(Test系)および47.7kJ・mol-1(Kpro系)であった。ProまたはKproとFeCl3系による重合を動力学的に追跡した結果メタノール中でのMMAの重合速度(Rp)は近似的に次式で表わされることがわかった。Rp=k[MMA] [Pro or Kpro+FeCl3]0.5ただし, [Hormone]/[FeCl3]=50この式は, ホルモンとFeCl3との反応により開始ラジカルが生成することを示唆しているが, 開始能を示した三者はいずれもステロイド環の17-位に水素を有するものであること, およびEpの低いことから, 開始ラジカルは17-位の水素とFe3+ 間のレドックス反応により生成していると推察した。しかし, 17-位に水素をもっていても卵胞ホルモン類は開始能を発現しなかったが,α,α'-アゾビスィソブチロニトリル(AIBN)によるMMAの重合系にこれらを添加すると抑制作用を示すことから, それら自身が3-位のフェノール性ヒドロキシル基に由来する抑制剤として機能したためと思われる。この現象は生体内に発生したラジカルを捕捉したり, または生体内ラジカル反応に拮抗する可能性も示唆しており生化学の面からも興味深い。なお, 重合開始能を示さなかったアンドロステロンやアンドロステンジオンなどの男性ホルモン類はAIBNによる重合にはほとんど影響を与えず,誘発反応によってもラジカル化し難い(ラジカルの攻撃をうけ難い)ことがわかった。
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