[Effects of E3123 on pancreatic injury in the isolated, perfused rat pancreas and in a pancreatic slice].

1994 
我々は摘出膵灌流標本を用い,外分泌系に焦点を当てた膵傷害モデルの作製を試みるとともに,この系を用いてトリプシン阻害作用を持つ新規グアニジン誘導体である4-(2-succinimidoethylthio)phenyl 4-guanidinobenzoate methanesulfonate(E3123)の作用を検討した.ラットの摘出膵灌流標本において,トリプシン-タウロコール酸あるいはphospholipase A2(PLA2)を膵管内に注入すると,灌流液中への膵酵素逸脱が観察された.本系におけるトリプシン-タウロコール酸膵傷害で,E3123は0.1および1μMと濃度依存的に膵酵素逸脱を抑制した.またPLA2膵傷害でも,E3123は10μMで有意な抑制作用を示した.一方E3123と同等のトリプシン阻害作用を持つメシル酸ナファモスタット(nafamostat mesilate)は,E3123に比較して膵傷害抑制作用が弱かった.この事実は以前報告したin vivoの膵炎モデルにおける結果とよく一致しており,本系はin vivoの膵炎モデルでの効果を反映する良いモデルであると考えられた.次に膵スライスのPLA2膵傷害系において,E3123は1-100μMと濃度依存的な傷害抑制作用を示したが,メシル酸ナファモスタットは10μMでも抑制作用を示さなかった.これらの結果は同じプロテアーゼ阻害剤に分類される両化合物の作用態度に質的な違いがあることを示唆するものであった.そこで,E3123の作用が細胞膜表面上で発揮されているのではないかと推測し,赤血球低張溶血に対するE3123の効果を検討した.E3123は濃度依存的(1-300μM)な溶血抑制作用を示した.以上より,E3123はトリプシン阻害作用だけでなく,膵外分泌細胞に対する保護的な作用も有している可能性が示唆された.
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