IgG4関連疾患(ミクリッツ病)とシェーグレン症候群―19世紀より続いた2つの病気をめぐる議論,そして今後

2011 
ミクリッツ(Mikulicz)病とシェーグレン(Sjogren)症候群は,ともに 19 世紀後期よりはじまった疾患概念である.対称性の涙腺・耳下腺・顎下腺腫脹をきたすミクリッツ病と,慢性の眼乾燥・口腔乾燥をきたすシェーグレン症候群は,その異同に関して混乱が続いた.1953 年 Morgan らが,ミクリッツ病は独立した臨床的・病理学的疾患単位ではなく,シェーグレン症候群の一表現型であると結論以後,20 世紀の間はミクリッツ病に関する論文(とくに英語論文)はほとんど記載されなくなった.21 世紀に入り IgG4 関連疾患が発見され,ミクリッツ病の多くも IgG4 関連疾患であることが報告された.多施設共同研究で,IgG4 関連ミクリッツ病を中心とした IgG4 関連疾患とシェーグレン症候群とを比較検討した結果,臨床的病理的にこの 2 つはまったく異なった疾患であることが証明された.IgG4 関連ミクリッツ病はステロイド治療によって腫脹していた涙腺や唾液腺が劇的に改善することが特徴である.IgG4 関連ミクリッツ病診断基準を作成し承認され,さらに全身性の IgG4 関連疾患に関しても各分野の専門家が集い統一した基準を作成する試みが続けられている.IgG4 関連疾患の病因検索が行われ,根本的な病因の解明とそれに基づいた適切な治療指針を作成していくべく努力が続けられている.
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