赤血球増加症を伴い, in vitroで腫瘍内cystの抽出液中に著明なburst promoting activity (BPA)活性を認めた腎腫瘍の1例

1982 
腎明細胞腺癌に多血症を合併し,その腫瘍内cystからの抽出液に,著明なburst promoting activity (BPA)活性を認め,腫瘍摘出後,多血症が改善した1症例を経験したので,報告する.症例は, 58才,男性.昭和50年から昭和55年にかけ, 2回,頭重感が出現したが放置.昭和55年8月,前胸部に軽い異和感が出現.当科外来で血算施行し,赤血球数725×104/mm3, Hb21.6g/dl, Ht67.6%を示し,精査のため, 8月29日入院.眼瞼結膜に充血を認める以外に,理学的には異常所見なし.検査では,著明な赤血球増加と,血沈値の遅延, FredricksonIV型の高脂血症を認めた.循環赤血球量は44.8m1/kgと増加し,排泄性腎盂造影で,左腎孟腎杯の上方への圧排像,レノシンチグラムで,左腎下半分陰影欠損,左腎動脈造影で,同部に広範なtumorsteinを認めた. 9月25鍵,左腎摘出術施行し,その下極に8.5×6.5×4cm大で,多数のcystを有する鍾瘍を認め,組織学的には, clear cell carcinomaであつた.摘出後,約2カ月で,赤血球数, Hb, Htは正常化した.一方,腫瘍内cystの紬出液を用いて,メチルセルロース法によるBFU-E形成法でBPA活性を測定したところ, BFU-Eは著明に形成され, BPA活性が異常亢進していると思われた.また,同液中のerythropoietin活性は証明されなかつたことより,本症例は腎BPA産生腫蕩と考xられた. BPA産生腫瘍の報告は,我々が調査した限りでは第1例であり,赤血球系造血調節因子として, erythropoietin以外の物質が注目されている現在,極めて示唆に富む症例と思われる.
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