Ischemic preconditioning の心筋保護効果
2001
近年, 開心術における心筋保護として ischemic preconditioning (IPC) は, 注目されるようになった. しかし, 灌流血の温度変化がIPCの効果にいかなる影響を与えているか不明である. 今回, われわれは, 微温 (32℃), 常温 (37℃) の心筋保護を想定し温度変化がIPC効果にどのような影響を及ぼすかを実験的に検討した. 体重40~50kgのブタ20頭を用いた. 気管内挿管下, 上・下大静脈脱血, 上行大動脈送血で体外循環 (ローラーポンプ) を駆動. IPCは, 上行大動脈を cross clamp することにより行った (3分間 cross clamp, 5分間再灌流を2回施行した). このモデルを以下の4群に分けた. 送血温37℃においてIPCを行った群 (37℃ IPC群: 5頭), 行わなかった群 (37℃ NIPC群: 5頭), 送血温32℃においてIPCを行った群 (32℃ IPC群: 5頭), 行わなかった群 (32℃ NIPC群: 5頭). パラメータは, CPK, アデノシン, トロポニンT, 血中NOなどを経時的に測定し前値, IPC終了後, 再灌流後, 再灌流10分後, 再灌流30分後に採取し, 4群間の比較検討を行った. 37℃ IPC群において心原性酵素, トロポニンT値は, 32℃ IPC群より低値を示した. 37℃ IPC群は, 32℃ IPC群よりアデノシンが, IPC終了後上昇し, その後徐々に低下し再灌流時に再度上昇する2相性の曲線を描き, 32℃ NIPC群, 37℃ NIPC群 (コントロール群) に比べ有意にその効果の優位性が確認された. いっぽう, 32℃ IPCでは, コントロール群と有意差はなかった. 以上の結果よりIPCは, 心筋保護効果を有し, その効果は体外循環常温送血時に顕著となることが示唆された.
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