マンガン(III)のtrans-1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸錯塩の合成と性質

1967 
水酸化カリウム水溶液中に懸濁した酸化マンガン(IV)は,trans-1,2-シクロヘキサソジアミン四酢酸(H4CDTA)と二酸化炭素を発生しながら簡単に反応して深赤色の錯塩溶液を生じる。この溶液に過剰のエタノールを加えると濃赤色の結晶が析出する。ヨード滴定から,この錯塩中のマンガンは3価であることが知られ,このことは磁化率の測定からも確かめられた。元素分析,酸アルカリ滴定およびイオン交換樹脂に対する挙動,また熱分析の結果を総合して,この錯塩結晶の化学式はK[MnC14H18O8N2]・3H2Oと考えられる。可視部の吸収スペクトルに現われる20000cm-1近傍の吸収極大は,5Eg→5T2g電子移譲によるものと考えられる。赤外吸収に現われる1650cm-1の吸収極大はカルボキシル塞の逆対称伸縮振動にかなりの共有結合性が加わったものと考えられる。なお粉末X線回折パターンも測定した。著者らは,この錯塩中におけるマンガンは6配位と考えるが,既知のFe(III)EDTA錯塩の場合を考えると(Fe(III)とMn(III)のイオン半径はほぼ等しい価である),この錯塩も6座配位7配位で,K[Mn(III)(OH2)CDTA)]という構造を持つ可能性も考えられる。
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