Abdominal surgery in patients on chronic hemodialysis. Nutritional assessment and operative risk.
1990
腹部手術95例, 延べ98回を分析した. 緊急手術率が63%と高かったのは, 虫垂炎が21例と多数であったためである. 手術対象疾患は過去5か年少しずつ変化した. 出血性胃・十二指腸潰瘍が減少し, 代わって消化器系癌腫が増加していた. 術後の合併症は, 待期手術群に比較して緊急手術群に明らかに多発し, 疾患それ自体の性状のほか, 術前準備が十分になしえない点にその原因があった. 日常透析を適正に行い緊急術を要する疾患を予防, 早期発見することが鍵となろう. 術後合併症として, 1. 肺鬱血・心不全, 2. 呼吸器感染症, 3. 肝機能障害, 4. 急性脳症候群, 5. 高K血症などの頻度が高かった. 開腹術に特有な合併症としては, 1. 排気遅延 (麻痺性イレウス), 2. 腸管吻合不全が挙げられる. 吻合不全は腸管吻合を行った50例中2例 (4%) に発生したが, いずれもイレウス状態で緊急にS状結腸 (癌) 切除の上, 端々吻合とした症例であった. 患者の全身・腹腔内の状態を十分考慮して術式を選択すべきである.術前に予め術後合併症発生の危険度を予測する手段として, 栄養学的手術危険指数 (NRI-佐藤) を検討し, NRIが透析手術例においても有用であることを知った. NRIは血清アルブミン・亜鉛, 末梢血リンパ球数および年齢の4項目から算出されるため, 前3者と若干の関連項目についても検討した. 血清プレアルブミン低値例は一般外科群・透析群共に高度な栄養不良状態で, しかも生命的予後が不良であり, 単一項目としては血清プレアルブミン値が最も鋭敏な栄養学的パラメータと考えられた. 近時, いわゆるmajor surgeryが増加してきており, 手術患者管理のknowhowは集積しつつある. 手術侵襲に大きな影響を受けしかもその回復の遅延する透析患者の手術に対しては, 腎不全と透析療法の特徴を十分に把握した上で, 細心の注意を払って臨む必要がある.
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