Clinical Study of using Prophylactic Antibiotics and Chemical Preparation for Elective Operation of Colorectal Cancer

はじめに: 大腸癌待機手術における予防的抗菌薬投与期間と術後感染症発生率の関係をprospective に検討した. 同時に化学的腸管処置の及ぼす影響について考察した. 方法: 5年8か月間の大腸癌待機手術521例を結腸と直腸で前層別し, 予防的抗菌薬の投与期間により2群に無作為化した. 抗菌薬投与期間は術直前+術後1病日までの投与と術直前+術後3病日までの投与とした. 結果: 術後投与期間により分けられた2群間の術野感染率および術野外感染率の間に統計学的な差を認めなかった. 患者の背景因子, 臨床病期や手術侵襲程度などを層別化し比較しても結果は同様であった. 化学的腸管処置を行わないと, 結腸や上部直腸手術の感染制御に問題はないが, 下部直腸手術, 特に直腸切断術後の術野感染率が上昇した. 一方, 2日間の化学的腸管処置群にMRSA腸炎, MRSA肺炎が確認され, 同処置がMRSAを誘導した可能性が示唆された. 化学的腸管処置1日投与群は下部直腸手術においても術野感染率やMRSAの発生率は低値を示した. 考察: Prospectiveな検討から術野感染と術野外感染の双方において, 予防的抗菌薬の投与期間を短縮しても術後感染症発生率に差を認めないことが確認された. 待機手術における抗菌薬投与期間は術直前+術後1病日までの短期間投与が妥当と結論される. また, retrospectiveな検討から下部直腸手術に限り術前日の化学的腸管処置は有効であることが示唆された.