大学院生の学習システムとしてのGTAの体系とその意義 : クリス・パーク論文が教育学研究者・教師教育者の育成に示唆するもの

2015 
本研究は,①大学院生は,GTAとしてどのようなつまずきに直面するのか,②つまずきの克服は,どのような仕組みで支援することが可能か,③とくに教科教育学を専門とする大学院生にとって,GTAの経験はどのような意味を持つのか,を解明することを目的とする。この問いを解くために,クリス・パーク (Chris Park) が執筆した “The Graduate Teaching Assistant (GTA):Lessons from North American Experience.” 「大学院生ティーチング・アシスタント (GTA)-北米の経験からの教訓-」を検討する。本論文は,2014年9月,シェリー・フィールドがRIDLS主催の講演会に登壇した際,北米のGTA研究の動向を概観できる有益な資料として紹介したもので,事実,多くの先行研究者が引用,参照する包括的なレビューとなっている。そこで本稿では,パーク論文を解題することで,上の問いにアプローチすることとした。パーク論文の分析から明らかになったのは,以下の3点である。①大学院生は,GTAとして,「他者との関係構築」「研究と教育の時間配分」「知識や経験の不足」「自分とは異なる多様な考えに開かれた姿勢を示すこと」でつまずく傾向にある。②GTAが直面する困難を克服するプログラムは,GTA制度に他ならない。そのためのGTAプログラムは,研究者・教育者のコミュニティへの正統的周辺参加の機会を提供するものでなくてはならない。また首尾一貫した「選定と養成」「トレーニング」「指導・助言とメンタリング」の仕組みづくりが要求される。③GTAの経験は,教育者(教員養成者)としての資質・能力に限らず,研究者ならびに教育者(教員研修者)としての資質・能力を高める契機ともなる。教育者と研究者それぞれの方法論が深く分かちがたく結びついている教科教育学を専門とする大学院生にとって,GTAとしての学びには一定の効果が期待できる。
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