(±)-1-アミノ-2-プロパノールの有機酸塩のラセミ体構造と優先晶出法による光学分割

1985 
(±)-1-アミノ-2-プロパノール((±)-AP)の有機酸塩の優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。使用したAPの有機酸塩は,2-アミノ安息香酸塩(2-AB塩),4-ヒドロキシ安息香酸塩(4-HB塩),4-メトキシ安息香酸塩(4-MTB塩),4-メチル安息香酸塩(4-MB塩),安息香酸塩(BA塩),4-クロロ安息香酸塩(4-CB塩),3-ニトロ安息香酸塩(3-NB塩),4-ニトロ安息香酸塩(4-NB塩),5-スルポサリチル酸塩(SS塩)およびメタンスルホン酸塩(MS塩)である。とれらの(±)-塩と(+)-塩の融点と融解エンタルピーとから求めた融点でのラセミ体の生成自由エネルギー(ΔGFmp)と,融点の二成分系状態図とから,(±)-塩のラセミ体構造について調べた。その結果,(±)-3-NB塩と(±)-MS塩とがラセミ混合物であり,(±)-4-MTB塩がラセミ固溶体であることがわかった。また,(±)-2-AB塩,(±)-4-HB塩,(±)-4-MB塩,(±)-4-NB塩および(±)-SS塩が,ラセミ化合物を形成しているeしかし,(±)-BA塩と(±)-4-CB塩とのΔGFmpは負の値を示し,これらの(±)-塩が融点付近でラセミ化合物として存在することを示したが,ラセミ化合物を形成している他の(±)-塩のΔGFmpの絶対値にくらべてきわめて小さく,(±)-BA塩と(±)-4-CB塩が室温付近ではラセミ混合物として存在する可能性を示した。そこで,室温付近でのラセミ体構造について,(±)-BA塩と(±)-4-CB塩との赤外吸収スペクトル,溶解度をそれぞれの(+)-塩のそれらと比較した。さらに(±)-4-CB塩については,その溶解度の三成分系状態図を作成した。これらの結果から,(±)-BA塩と(±)-4-CB塩とは,融点付近ではラセミ化合物を形成しているが,室温付近ではラセミ混合物として存在することがわかった。そこで,室温付近でラセミ混合物である(±)-BA塩,(±)-4-CB塩(±)-3-NB塩および(±)-MS塩を優先晶出法により,10℃で,その他の分割条件を変えて光学分割した。(±)-BA塩と(±)-4-CB塩に関しては,それぞれ光学純度が90%の(+)-塩が得られたが,その分割率は低い値であった。(±)-MS塩の光学分割において,光学純度が80~90%以上の(+)-塩を得ることが可能であり,その分割率も比較的高い値を示した。(±)-3-NB塩では,もっとも良好な分割結果が得られた。(±)-3-NB塩の過飽和度が120%のエタノール溶液から,光学純度81~93%の(+)-塩が分割率43~65%で得られた。
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