Reversed elephant trunk technique による広範囲大動脈瘤治療の検討

2012 
Reversed elephant trunk(以下R-ET)techniqueは広範囲大動脈瘤のstaged repairで末梢側手術を先行する場合,次回手術に備え人工血管の中枢側を内側に折り返しておく方法である.正中切開から行う弓部置換は肺門レベルまで可能とされるが,十分な視野やworking spaceが得られず剥離や末梢吻合,止血に難渋することがある.R-ETを施行すれば折り返した人工血管を引き出すことで容易に末梢吻合を行うことができる.R-ETをおいた症例で当初の目的を達成できたか,R-ETに起因するトラブルがなかったか,について検討した.下行大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤症例のうち,6例にR-ETをおいた.男性5例,女性1例,平均年齢61.7歳(54~69歳).下行大動脈瘤破裂1例,下行大動脈瘤切迫破裂2例,胸腹部大動脈瘤切迫破裂1例,下行大動脈嚢状瘤2例であった.術式はすべて人工血管置換術を行った.人工血管は初期3例でHemashield,後期3例でGelweaveを使用した. 6例中3例に2期手術として弓部置換を施行し(初回手術後14,23,38カ月),1例が7カ月後に破裂死亡した.残り2例は中枢側の拡大なく観察中である.観察中後期2例に折り返した人工血管と外側の人工血管の間に血栓形成を疑うCT像を認めた.末梢への血栓塞栓症を生じなかった.うち1例に弓部置換を行い折り返しの外側に血栓を認め,これを除去して吻合を行った.2回目の手術を施行した3例とも末梢側吻合は容易で出血もなく,肺損傷,反回神経麻痺,横隔神経麻痺などの合併症はなかった.弓部置換を施行した3例中1例を多発性脳梗塞で失った.R-ETをおいた症例では2回目手術の末梢吻合は容易であり出血や剥離に関するトラブルを生じず有用であった.折り返し部分に血栓を生じたが再手術時に確実に血栓を除去することで使用可能であった.
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