Experimental and clinical studies on ischemic lesions of the large intestine

1994 
人口の老齢化と食生活の欧米化にともない, 虚血性心疾患や大動脈瘤, ASOなどの動脈硬化性疾患は増加しており, 外科的治療が選択されることも多い. 腹部大動脈の置換や遮断を伴う手術後には高頻度に虚血性腸病変の発生することが知られており, しかもこれには不可逆性の腸管壊死をきたす割合が高いと報告されている. 本研究ではこの血管手術後の虚血性腸病変の診断および治療方針の決定に重要な意味をもつ内視鏡所見の特徴を把握する目的で, イヌを用いて種々の腸管虚血状態を実験的に作成してその病像を解析し, 実際の臨床例と対比しながら検討を行った.その結果, イヌの大腸を栄養する動脈を様々な組み合わせで結紮しても腸管の壊死をともなう虚血性病変は作成されず, Gelfoam を用いて栄養動脈を塞栓したモデルで高率に潰瘍形成や壊死病変が出現した. この血管塞栓モデルの内視鏡像は, 腸管全周におよぶ潰瘍性病変を主体とするものが高頻度にみられた. また, 虚血性大腸炎に典型的とされる縦走性の潰瘍やびらんは, 血管を一時的に遮断した後再灌流したモデルで高率に認められた.一方, 1988年4月より1993年8月までに当院で経験した血管手術後の虚血性腸病変症例は9例で, これらの症例では一般的な虚血性大腸炎に比較して年齢分布がより高齢で重症例が多く予後が悪い傾向がみられた. 9例中3例が腸管の広汎な壊死を示す壊死型であった. これらの症例の内視鏡所見は, 下部直腸病変の存在, 腸管全周に認められる潰瘍形成や壊死性変化を特徴としており, 血管塞栓実験モデルの内視鏡像に類似していた. これらの結果から, 血管手術後の虚血性腸病変重症例の成因として, 腸管壁内の細動脈の塞栓の関与が大きいと考えられた.
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