公共交通が不便な地域の在宅高齢者における保健行動, 外出行動, 交通環境に対する認識の相互関連性

1999 
生活環境の整備による高齢者の保健行動の変化を予測することをめざし, 在宅高齢者の保健行動, 外出行動および交通環境 (利用可能な交通手段の意味で用いる) に対する認識の関連性について, 郵送留置調査をもとに検討した. 調査期間は1995年7月27日~8月12日である. 調査項目は保健行動, 健康状態, 日常生活水準, 保健行動に対する態度, 外出の活発さ (外出欲求を含む), 交通環境に対する認識である. 調査地域は, 公共交通が比較的不便な地域として神奈川県A郡A町を選択し, 調査対象は, 層別無作為抽出法によりH地区在住の60歳以上の男女567名とした. 回答者397名 (回収率74.2%; 死亡・転居等を除く) のうち, 1人では外出困難でかつほとんど外出しない人を除く368名を分析対象とし, 単回帰分析および重回帰分析を適用した. 目的変数および説明変数として, 保健行動およびその関連要因に対する質問項目 (計42項目) に対し“あてはまる”と回答した項目数を投入した. 加えて交絡変数として年齢を投入した. 保健行動の関連要因のうち, 標準回帰係数が危険率5%で有意な要因を抽出した.結果は, (1) 保健行動の活発さを目的変数とした重回帰分析の決定係数は男性で42%, 女性で48%であり, 男女ともに年齢・日常生活水準・保健行動に対する意識が関連していた, (2) 女性では外出の活発さが増すと保健行動の活発さが増し, 交通環境について感じる問題が増すと外出行動が抑制されるが, 男性では関連がみられなかった, (3) 男性では単回帰分析において保健行動と健康状態の関連がみられたが, 女性では関連がみられなかった. 重回帰分析においても男性では女性にくらべて健康状態の標準回帰係数が大きかったことから, 男性では保健行動に対する健康状態の寄与が, 女性よりも大きいと考えられた.今回の結果は, 公共交通の比較的不便な地域に居住する在宅高齢者の保健行動と関連する要因には男女差があり, 女性では交通環境に対して感じる問題が外出行動を抑制し, 保健行動を抑制する可能性を示唆している.
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