潰瘍や臭気を伴う乳癌に対する乳癌消臭パッドの有効性・安全性評価(APOLLO 試験)

2020 
乳癌の認知度が上がり,同時に検診の普及により早期発見が得られるようになったが,手術を施すことができない進行癌の状態で発見される患者を臨床上多々経験する.切除できず増大した乳癌はやがて皮膚に潰瘍を形成し,出血,分泌物および異臭の発生により患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる.当院で処置を必要とした皮膚浸潤進行乳癌34 例を検討したところ,皮膚潰瘍に伴う症状に悩まされた期間(中央値)は診断前で1 年,診断後で2 年半と長期にわたっていた.進行した皮膚潰瘍に対する局所の処置として定まった方法はなく,ガーゼや市販のパッドにいろいろな塗布剤を適宜用いて処置を行っているのが現状であるが,局部からの滲出が多い場合,交換回数が増え,臭気に悩まされることもしばしばである.また,被覆材の交換処置を自身で行うことがむずかしかったり,処置専用のパッドが市販されていなかったりと,問題点も少なくない.局所進行乳癌は進行速度が速い若年から壮年期に生じることが時にあり,局所のマネジメント不良が,家庭や仕事場において役割をはたすことへの支障となることも散見される.このような背景のもと,局所進行乳癌用の消臭パッドの開発が開始された.このパッドは局所進行乳癌病変の全体をおおい,発生する臭気をコントロールするように設計された.Alexander らは,自壊創の臭気は,感染した嫌気性菌やその他の菌の代謝によって低級脂肪酸(酪酸,吉草酸など),アミン,ジアミン(カタベリ,プトレシン)が生成することによるとしており,さらにジメチルトリスルフィドも原因の一つであるとの報告もある1~3).そのため,臭いへの寄与が高い主要5成分を酪酸,イソ吉草酸,ジアセチル,ジメチルトリスルフィド,トリメチルアミンであると特定し,化学的消臭剤と物理的消臭剤を組み合わせて,局所進行乳癌用消臭パッドは作成された4).今回,われわれはその乳癌消臭パッドを用い,局所進行乳癌患者における使用感のほか,臭気に対する有効性・安全性の評価を行う装着試験(theefficiency and safety of the deodorAnt Pad against Odor and uLceration for LOcal advanced breast cancer:APOLLO 試験)[UMIN 000036906]を行ったのでその結果を報告する.
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