von Recklinghausen病の神経線維腫より抽出した塩基性線維芽細胞増殖因子活性による培養神経線維腫細胞の癌遺伝子c-fos発現の検討

1994 
von Recklinghausen病(neurofibromatosis, type 1)の神経線維腫(NF)より塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を抽出, 精製する目的でNFの粗抽出液を作製し, ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行った。1.0Mおよび1.4M NaClで溶出される2つのピーク分画にNIH3T3線維芽細胞を増殖させる活性がBrdU標識法で検出された。この溶出パターンはRatnerらの報告するパターンに極めて類似し, 後半のピークがbFGFと推定された。このピーク分画をNIH3T3線維芽細胞およびNF培養細胞へ添加すると癌遺伝子c-fos発現が誘導された。またウシbFGFをNIH3T3およびNF細胞へ添加して, c-fosタンパクの発現時間を免疫螢光染色法により比較すると, NF細胞の方がより長時間(添加後3時間まで)その局在が観察された。また正常人2名より得られた培養線維芽細胞とNF細胞についてのウエスタンブロット法による比較では, リコンビナントヒトbFGF 100ng/ml添加3時間後でも正常人の線維芽細胞ではc-fosのバンドが観察されたが, NF細胞ではヒトbFGF添加前でもc-fosのバンドが観察され, 明らかに正常とは異なるc-fos発現のパターンが得られた。以上の結果よりNFにはbFGFが生化学的にも検出されうる量で存在し, その抽出されたbFGFはウシbFGFと同じくNIH3T3およびNF細胞にin vitroでc-fosを発現させうること, またNF細胞ではbFGFに対するc-fos発現の反応がNIH3T3細胞および正常線維芽細胞とは異なることが明らかとなり, protooncogenesの活性化の調節異常が引き起こされている可能性が示唆された。
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