軽度鈍的腎外傷(日本外傷学会腎損傷分類2008 Ib型)による腎動静脈瘻の一例
2011
症例は49歳の男性。自宅階段にて転倒し,右腰部を打撲したが,受診せずに自宅にて経過観察をしていた。徐々に打撲部の疼痛が増強し,肉眼的血尿も出現したため,受傷後5日目に近医を受診し,腎損傷の疑いで当院へ救急搬送された。来院時,呼吸・循環動態に問題はなく,右腰部痛と肉眼的血尿以外に異常所見を認めなかった。造影CTを施行したところ,右腎損傷(日本外傷学会腎損傷分類2008 Ib型)を認めた。保存的治療を行い肉眼的血尿は徐々に改善し,受傷後13日目に退院となった。受傷後29日目に血尿が再燃し,当院泌尿器科外来を受診し造影CTを再度施行した。腎動静脈瘻の可能性が高いと考えられたが,循環動態が安定していたため,待期的に血管造影を行う方針となった。受傷後33日目に肉眼的血尿が再度増悪し,救急外来を受診した。同日に施行した血管造影で右腎動静脈瘻と仮性動脈瘤を認め,コイル塞栓術を施行した。塞栓術施行後,血尿は改善した。外傷性腎動静脈瘻は稀で,そのなかでも鈍的外傷が原因となるものは少ない。本症例のように軽度の腎損傷(日本外傷学会腎損傷分類2008 Ib型)では保存的治療を選択することが多いと考えられる。肉眼的血尿が持続する場合,腎動静脈瘻または仮性動脈瘤を考慮すべきである。この場合,経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)は有効な治療手段となり得ると考えられる。
- Correction
- Source
- Cite
- Save
- Machine Reading By IdeaReader
5
References
0
Citations
NaN
KQI