溶質移動シミュレーションを用いた二重濾過膜血漿交換(DFPP)の安全な施行

2011 
二重濾過膜血漿交換(double-filtration plasmapheresis:DFPP)においては患者個々の体格,血漿分離比,血漿成分分離比,置換液量および置換アルブミン濃度によって体内の溶質の収支は変化し,治療後の血漿中溶質濃度の予測は困難であった.特に自己免疫性神経疾患や血液型不適合腎移植に対するDFPPは,短期間に連続的に施行される場合が多く,生体に必要な物質の収支においても十分な注意が必要である.今回われわれは,DFPPによる生体の溶質移動をシミュレートする計算式(DFPP理論式)を作成するとともに,実験および臨床における測定値と,シミュレーション値との比較検討を行い,DFPP理論式を用いた溶質移動シミュレーションの臨床における有用性について検討した.DFPP理論式には治療前の溶質濃度,患者の体重とヘマトクリット(Ht)から算出した循環血漿量,血漿分離流量,ドレーン流量,血漿分離器ふるい係数,血漿成分分離器ふるい係数,アルブミン補充量を用いた.IgG,フィブリノゲン,アルブミンを対象とし,各ふるい係数には臨床データを使用した.実験においては血漿交換施行後のヒト廃棄血漿を用い,10分ごとの測定値と,シミュレーション値との適合性を検討した.臨床においては6患者18例の治療前後の測定値をHt補正した値と,シミュレーション値との適合性を検討した.シミュレーション値は,実験値と臨床値とのいずれの間にも有意な相関関係がみられ,DFPP施行における溶質濃度変化をシミュレートできることから,臨床においてDFPP施行時の溶質収支指標として十分活用できると考えられた.本研究で作成したDFPP理論式は個々の患者に合わせて,さらにさまざまな設定条件下で,溶質濃度変化をシミュレートすることができる.また,ほかの製品を用いる場合でも,各ふるい係数がわかっていればDFPP理論式の応用が可能であり,製品の選択,治療条件の決定,DFPP施行時の安全性の確保などにおいて有用である.
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