A 5-month-old boy who received acetate-free dialysis

2011 
乳幼児は,血液透析中に低血圧やショックに陥りやすい.また透析中不機嫌になると安静が保てなくなり,啼泣や体動などにより容易に脱血不良を起こし,さらにバイタルサインの正確な測定も困難になるなど,透析が困難になることが多い.今回われわれは,透析中に不機嫌になることを繰り返していた生後5か月の血液透析施行中の男児に,無酢酸透析液の使用を試みた.症例は,生後1か月時に,腸間膜裂肛ヘルニアによる絞扼性イレウスのために腸管穿孔を起こし,心肺停止・腎不全に陥った.心肺停止からの回復後,小腸の70%を切除する手術を行った後に,短腸症候群に対し高カロリー輸液が開始され,腎不全に対してカテーテルによる血液透析が開始された.腹腔内癒着のために腹膜透析が不可能であったため,皮下埋め込み型のバスキュラーアクセスを左外頸静脈に留置して,血液透析を継続した.透析中に不機嫌になり啼泣することを繰り返していたために,昨今低血圧や不均衡症状の改善効果が注目されている無酢酸透析液を試みることとした.それまでの透析液に含まれている酢酸は0.5mEq/Lと非常に微量であったが,無酢酸透析液に変更してから,不機嫌や啼泣が緩和され,クリットラインの低下も軽減され,安全に除水できるようになったことより,微量の酢酸が症状を引き起こしていたのだと考えられた.無酢酸透析液使用に伴う有害事象もなかった.透析液中に含まれている酢酸は,内皮細胞におけるNO産生亢進によると思われる末梢血管拡張作用や,単核球からの炎症性サイトカインの産生誘導作用などが報告されている.血圧が下がりやすく,安静が保ちにくい乳幼児の血液透析に,無酢酸透析液は有用であると考えられた.
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