Extracorporeal membrane oxygenation により救命した新型インフルエンザA(H1N1)による小児重症呼吸不全の1例
2010
2009年,新型インフルエンザA(H1N1)の重症肺炎で急激に呼吸状態が悪化した生来健康な11歳の女児をextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)で救命したので報告する。症例は来院前日に37.8℃の発熱と喘鳴が出現した。呼吸状態が急激に悪化し,当院小児科を経て救急集中治療部に入院となった。入院時,強い努力呼吸あり,高流量酸素投与にもかかわらずSpO2 80%前半のため,気管挿管下に人工呼吸を開始したが,呼吸状態は急激に悪化し続けた。胸部X線では右上中肺野,左下肺野に無気肺と縦隔気腫を認め,呼吸性アシドーシスが進行したため,人工呼吸管理の限界でECMOの適応と判断した。veno-venous ECMOを開始し,人工呼吸器は“Lung rest”の設定とした。十二指腸チューブよりオセルタミビル 450mg/dayを投与開始し,サーファクタント480mgを気管内投与した。その後,呼吸状態は順調に回復し,肺のコンプライアンスは増加,胸部X線写真も改善した。ECMOに関連する合併症も認められず,73時間後に離脱に成功した。翌日には気管内チューブが抜去され,現在日常生活に戻り,呼吸困難もない良好な状態である。本症例は,遅れることなくECMOを導入することにより,酸素化を維持して酸塩基平衡を正常化させた。また十分な抗ウィルス療法と共に,Lung restの状態で気管支ファイバーによる気管支の粘液栓除去などの積極的な治療が可能になり,病態を急速に改善できた。小児において,新型インフルエンザ感染による重症呼吸不全では,ECMOの導入を積極的に考慮することが推奨される。
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