紙表面につく傷の生成機構と耐傷性の要因(第1報) : 変形および破壊形態の観察と評価

2010 
光沢紙は,その高い光沢が高級感を与えることから,高品質な画像印刷用途や化粧品などの高級紙箱などに使用される。しかし高い光沢性及び平滑性のため,紙の表面に傷が生じた場合,欠陥部分そのものが微小であっても,傷の部分だけ反射光が散乱しやすい傾向にある。その結果,人の目による傷の認識が容易となる問題が挙げられる。このような傷の発生を抑制することは重要であるが,傷の発生機構はほとんど解明されていない。本報告では,キャスト光沢紙の「傷の大きさ・傷の形状」について着目し実験を行った。始めに,レーザー顕微鏡(LSM)を用いて,実際の傷の形態観察を行った。次に,表面引掻き試験を行い,生成した傷の観察画像を解析して得られた傷の形態的特徴(形状,大きさ)を同一の引掻き強度で比較することにより,各種塗工紙の耐傷性の評価を行った。LSMによる観察の結果,塗工層表面に発生する傷は,「塑性変形タイプ」と「脆性破壊タイプ」に分類できることがわかった。また針引掻き試験の結果,塗工層表面は,凹みやすい(塑性変形しやすい)もしくはヒビ割れしやすい(脆性破壊しやすい)の2つの異なる傾向を示すことがわかった。オフセット印刷用に使用されるキャスト光沢紙は凹み傷が多い塑性変形タイプ,インクジェット印刷用キャスト光沢紙は脆性破壊タイプの傷になり易い傾向が見られた。しかし実際の傷は,これらの両方の要因が組み合わさっている場合が多い。これらの関係を議論するために,傷の変形断面積及びヒビが発生する荷重測定を行った。変形断面積が低いこと及びヒビ発生荷重が高いことの両方が,傷を抑制するために必要であることが,今回の結果から推測される。
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