血清creatine phosphokinase (CPK),ミオグロビンが異常高値を示した糖尿病性ケトアシドーシスの1例

1982 
血清CPK,ミオグロビンが異常高値を示した糖尿病性ケトアシドーシスの1例を報告する.症例は23才の女性で,以前に糖尿病と診断されたことはなかつた.入院時昏睡,ショック状態であつた.血糖は526mg/d1,血中,尿中ケトン体は陽性であつた.動脈血pHは7.16,重炭酸イオンは9.2mEq/lであつた.少量インスリン持続注入療法,輸液にて覚醒した.入院時血清CPK, LDHはそれぞれ124IU/l, 181Wro.Uと正常であつたが,血清ミオグロビンは2745ng/m1と上昇していた.治療開始後CPK, LDHは上昇し,ミオグロビンはさらに上昇した.血清ミオグロビンは入院後2日目で11690ng/mlに, CPK, LDHは3日目にそれぞれ29000IU/l, 1758Wro.Uと最高に上昇した.血清ミオグロビン, CPK, LDHは約10日で正常に復した.CPKアイソザイムではMMが95~97%, LDHアイソザイムではLDH5が最高58.5%を占めていた.心電図には心筋硬塞を示す所見はなかつた.また臨床上筋炎,外傷も認めず,筋注も行なわなかつた.肝生検では肝細胞壊死を認めなかつた.以上の検索より,本症例にみられた高CPKおよび高ミオグロビン血症は骨格筋由来のCPK,ミオグロビンが血中に遊出したために生じたと考えた.その機序として糖尿病性ケトアシドーシス,脱水,ショックなどにより,骨格筋のanoxiaが生じ,細胞膜透過性亢進が惹起された可能性が重要と思われた.
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