Risk Assessment of Japanese Avian Infectious Diseases Performed by the Wild Animal Medical Center (WAMC), Rakuno Gakuen University, Japan

2008 
極東ロシア地域からのウエストナイル熱ウイルスが日本に伝播することが懸念されており,その場合には,野鳥の大量死が発生することが想定されている。酪農学園大学野生動物医学センター(以下,WAMC)では,学外専門家との共同で野生鳥類の普通種を対象にウエストナイルウイルスの簡易診断キットVecTest(米国Medical Analysis Systems, Inc. 社 : 同ウイルスのモノクロ抗体応用)(以下,キット)応用の可能性とこの感染症に関連した調査を行っている。WAMC(担当 : 吉野・浅川)において口腔内スワブを採取し,このスワブをキット用サンプルとした。一部は脳,心臓,腎臓から抽出したRNAをリアルタイムPCR法(担当 : 大沼)および10%脳乳剤Vero細胞接種法によるウイルス分離法(担当 : 前田)による確定診断を実施した。これまでの実績としては658個体(20目123種)(傷病入院個体含む)(吉野ら,2008)が検査され,疑陽性を呈したスズメ(Passer montanus)一個体を除く,すべてが陰性結果を呈した。疑陽性を呈した個体については,同時期・同地域に由来する5個体のスズメと共に,前記確定診断により陰性を確定した。さらに,関連調査として北海道の野鳥(カモ類)および哺乳類(アライグマなど)血清中の抗フラビウイルス中和抗体価測定(担当 : 斉藤),キットを用いた酪農大構内のアカイエカを対象にした予備調査(担当 : 佐々木)および救護鳥類でのキットによる診断(担当 : 加藤,盛田)などを実施している。混合感染で症状を増悪化させる可能性がある原虫類については,血清分離後の血餅およびスライド塗沫標本によるPlasmodium属などの分析(担当 : 村田)も予定され,サンプルの有効活用も計る。今回行ったモニタリング調査の結果も含め,信頼性が高いとされるキットを用いた検査であっても,疑陽性・陽性反応が出た時点における確定診断検査の体制をあらかじめ組み立てておくべきであろう。また,病原体の伝播と混合感染という病原体の生態現象を鑑みた場合,媒介昆虫や寄生虫を含む他の病原体なども対象とした調査としなければ,自然生態系に生息する野鳥の絶滅リスクの増大を予見することは困難である。よってWAMCではより広範囲な動物・病原体を対象とした調査研究を実施しているのでその概要についても触れたい。本研究は環境省地球環境研究総合推進費(F-062 : 渡り鳥によるウエストナイル熱および血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究)および文部科学省科学研究費(18510205)の支援を受けて行われた。
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