モラエスと小説『孤愁〈サウダーデ〉』 : 新たなモラエス像の可能性

2016 
ポルトガル人ヴェンセスラウ・デ・モラエス(1854−1929)は,徳島で16年間過ごして没した。徳島の土地と人々を慈愛に満ちた目で描いた『徳島の盆踊り』(1916)や『おヨネとコハル』(1923)は,100年前の徳島の姿を祖国ポルトガルに伝えている。そのモラエスについては,2012年に藤原正彦が父新田次郎の遺作を書き継いで小説『孤愁〈サウダーデ〉』を完成した。モラエスを知るには格好の評伝小説であるが,モラエスの実像とその虚像との隔たりには留意しておかなくてはならない。だが,この小説によってモラエスの新たな側面が開ける可能性がある。本論では,親子2代,ふたりによって書かれた類まれな小説に見られる特徴と,その小説が開く新たな可能性を検証しておきたい。
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