Abdominal ultrasonography in long-term dialysis patients
1984
長期透析中の患者の腎にみられる後天性の腎嚢胞と, これに高率に合併すると言われる腎癌の診断にはX線CTが有用とされているが, 超音波検査の有用性に関する報告は殆どみられない. 一方われわれは日常診療において, 腎癌や腎嚢胞の診断には超音波検査が非常に有用と考え, 超音波検査を従来のX線検査に代る第1選択の検査法としている.今回われわれは, 慢性透析患者94例を対象に腎癌, 腎嚢胞などのスクリーニングを目的とした腹部超音波検査を施行, 単純X線CT検査との比較も行い, 以下の結果を得た.超音波検査では著しい萎縮腎を除く殆どの腎 (97%) が描出可能であった. 腎嚢胞の診断能はCTより超音波検査がすぐれていた. 超音波, CT両者で全体の44.2%に多発性嚢胞, 11.6%に単発性嚢胞の合併が診断された. 嚢胞の合併率は透析期間が長いほど高率となり, 2年未満で41.4%, 2年以上4年未満で48.1%, 4年以上6年未満で66.6%, 6年以上では83.4%の合併率であった. 超音波検査で2例の腎癌が診断されたが, このうち1例はCTでの診断は困難であった. 腎の石灰化病変の診断にはCTがすぐれており, 超音波検査では診断不能例が多かった. 3例の嚢胞内出血が超音波検査および超音波ガイド穿刺で診断された. 超音波検査では腎以外の病変として, 11例の胆石症をはじめ, 肝嚢胞4例, 肝腫大, 脾腫各4例, 胸水2例, 腹水1例, その他肝静脈下大静脈の拡張が診断可能であった.以上の結果と超音波検査の簡便性, 非侵襲性, 経済性などを考え合せると, 透析患者の腎嚢胞, 腎癌をはじめ各種疾患の画像診断に際しては, 超音波検査を第1選択とすべきと考える. さらに, 透析開始前より慢性腎不全患者の腹部超音波検査を定期的に行うことは, 嚢胞や腎癌など腎病変の早期発見はもちろん, 腎不全の病態の総合的な把握にも有用であると考える.
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