老年者高血圧に対する captopril と carteolol の有効性と安全性

1987 
老年者高血圧に対する captopril (CAP) と carteolol (CAR) の有効性と安全性を検討するために, 脳梗塞と糖尿病合併例を含む60歳以上の本態性高血圧39例を2群に分け, CAP 37.5mg/日あるいはCAR 15mg/日を12週間投与し, 臥位と立位の血圧を測定し自覚症状を調べた. 治療の前後で臨床検査を施行した. 5例が脱落した. 平均年齢はCAP群73.5歳, CAR群71.9歳であった. 観察期の血圧は両群間に有意差はなかったが, CAP群では平均186.2/96.9から12週後に161.0/88.1mmHgへ, CAR群では178.3/89.5から160.7/83.4mmHgへいずれも有意に低下した. 起立に伴う収縮期圧の低下はCAP群で-16.9から12週後に-20.8mmHgに, CAR群で-13.5から12週後に-14.1mmHgに変化した. 観察期における両群間の差, および各群の投薬後の変化は, いずれも有意ではなかった. 脈拍数は有意の変化を示さなかった. 血清クレアチニン値は両群とも僅かではあるが有意に上昇した. 尿素窒素値はCAP群で有意に上昇した. カリウム, 尿酸, 総コレステロール, トリグリセライド値は不変, 血清 dopamine β-hydroxylase 活性は両群で有意に低下した. 自覚症状ではゆううつ感が1例増加したが, 立ちくらみ, めまいは増加しなかつた. CAR群に心不全と喘鳴が各1例みられたが, 治療を続行できた. CAP群で1例の血圧が過度に低下し脱落した. このように両薬剤は老年者高血圧を青壮年者と同程度下げるが, 起立時の血圧低下を増悪させず, 自覚症状の悪化もみられなかった. 両群とも腎機能が軽度低下し, これは老年者の特徴と考えられたが, 治療に支障をきたす程ではなかった. これらの点からみると両薬剤は老年者高血圧に有効かつ安全な降圧剤といえるが, 合併症をみることもあるので, 注意深く観察する必要がある.
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