透析条件・透析量と生命予後 : 患者背景別の検討

2011 
透析時間,血流量および透析量(Kt urea)と生命予後の関係の,患者背景による違いを明らかにするため,日本透析医学会の統計調査結果を用いて,後ろ向きの観察的研究を行った.2002年末の週3回施設血液透析患者を対象に,事故・自殺を除く死亡をエンドポイントとして,2003年末までの1年死亡リスクと2007年末までの5年死亡リスクについて,ロジスティック回帰分析を行った.性,年齢,透析後体重(post dialysis body weight:PDBW),透析前アルブミン値(Alb),%クレアチニン産生速度(%CGR),標準化蛋白異化率(normalized protein catabolic rate:nPCR)で層別化して検討した.透析歴5年以上の患者の結果は以下の通りであった.透析時間は240分以上270分未満を基準とすると,患者背景によらず,透析時間が短い患者群で死亡リスクが高く,長い患者群で死亡リスクが低かった.血流量は200mL/分以上220mL/分未満を基準とすると,血流量が少ない患者群で死亡リスクが高かった.女性,年齢75歳以上,PDBW 40kg未満,Alb 3.0g/dL未満,%CGR 80%未満,nPCR 0.7g/kg/day未満の患者を除き,血流量が多い患者群で死亡リスクが低かった.Kt ureaは38.8L以上42.7L未満を基準とすると,Kt ureaが小さい患者群では死亡リスクが高かった.Alb 3.0g/dL未満,%CGR 80%未満,nPCR 0.7g/kg/day未満の患者を除き,Kt ureaが大きい患者群で死亡リスクが低かった.透析歴5年未満の患者でも,同様の結果であった.一般的な週3回血液透析では,栄養状態が不良な患者を除き,基本的に透析時間の延長や血流量の増加により透析量を増大させることで,患者の生命予後を改善する可能性が示唆された.
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