人間ドック, 一般健診受診者に対する血清Helicobacter pylori菌IgG抗体測定の意義とその有用性について

2009 
近年,Helicobacter. pylori菌 (以下,H. pylori菌) 感染が萎縮性胃炎および胃がんの発生に関与することが示唆されたことから,我々はH. pylori菌感染の診断が胃病変の存在を疑う重要な指標になると考えている。そこで,我々は血清H. pylori IgG抗体 (以下H. pylori抗体) と,H. pylori菌感染の有無,萎縮性胃炎の有無,および胃病変の有無との関係を検討することにより,人間ドック,一般健診におけるH. pylori抗体測定の意義を考察した。対象は茨城県取手市および周辺農村地域から人間ドック,一般健診,あるいは外来を受診した148名 (男: 93名,女: 55名) で,上部消化管内視鏡受診者が87例,上部消化管造影受診者が80例であった。内視鏡検査施行87例のうち,H. pylori抗体陽性は55例 (63%) であった。H. pylori菌は抗体陽性55例中41例 (75%),陰性32例中8例 (25%) に認められ,これらの間に有意差が認められた (P<0.0001)。胃病変別のH. pylori抗体陽性率は表層性胃炎,萎縮性胃炎,びらん,潰瘍,胃底腺ポリープ,過形成性ポリープ,腺腫,悪性腫瘍でそれぞれ,17%,70%,61%,77%,31%,62%,0%,100%であった。また,造影検査施行80例中,H. pylori抗体陽性は44例 (55%) で,抗体陽性率は,所見なしが61%,陥凹性病変が59%,隆起性病変が36%,悪性腫瘍が100%であった。以上より,萎縮性胃炎や潰瘍性病変などでH. pylori抗体陽性率が高いことから,人間ドック,一般健診受診者に対して,H. pylori抗体陽性は上部消化管検査,特に内視鏡検査を勧める上で有用な動機付けになり得ると考えられた。
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