Drifting Pumice Clasts Derived from Ulleung Island in Early Holocene Sediments at Oda, Shimane Prefecture, Southwestern Japan

1997 
島根県大田市東方,波根地区で得られた掘削コアの標高-13.6mには厚さ2cmのトラカイト質軽石からなるテフラ(波根軽石)が挾まれる.波根軽石は鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)より下位にある.この軽石は火山ガラス,サニディン,単斜輝石,ケルスート角閃石,黒雲母,磁鉄鉱およびごく少量の斜長石からなる.本論文では,波根軽石および欝陵島のステージIVの軽石の全岩主・微量成分組成,および火山ガラスと構成鉱物の主成分化学組成を報告した.波根軽石と日本列島近辺の第四紀後期広域テフラの全岩,火山ガラス,鉱物組み合わせを比較検討した結果,波根軽石は9,300yrs BPの噴出年代を示す欝陵隠岐テフラ(U-Oki),すなわち欝陵島のテフラU-2より下位のU-4(下部)に対比可能である.波根軽石を挾在する掘削コアの堆積物は,完新世初期の海進期のものと判断されるので,波根軽石の年代の下限は10,000yrs BPより古くはならない.軽石の産状やコア試料から推定される堆積環境,および他地域のU-Okiの産状との比較から判断して,波根軽石は海流によって運ばれ,内湾の汀線付近に漂着したものと推定される.すなわち完新世初期の海水準は軽石層の挾在深度である標高-13.6mにあったものと判断される.汀線の位置を示し,しかも噴出年代が知られている漂着軽石の存在は,海水準の相対的変動を知る上で重要であり,また古海流の推定にも貢献する.
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