Problem of Diagnosis of Acute Aortic Dissection in the Early Phase
2000
急性大動脈解離は致死的な合併症を起こしやすく予後不良な疾患である。その治療の向上には的確な早期診断が不可欠と考えられる。われわれは,名古屋第一赤十字病院における急性大動脈解離症例について検討した。対象と方法;1994年1月から1998年12月に急性大動脈解離と診断され名古屋第一赤十字病院に入院した105症例のうち,救急外来に直接来院受診,または急性大動脈解離と診断されずに紹介受診した51症例である。診断に要した時間を1時間未満のI群,1時間以上4時間未満のII群,4時間以上のIII群に分け解析した。結果;男性31症例,女性20症例,年齢は28~82歳(平均69歳),Stanford A型が23症例,B型が28症例であった。I群は16症例,II群は21症例,III群は14症例であった。入院時の身体所見,検査所見は3群間に有意差は認められなかった。胸背部痛が認められたのはI群が16症例,II群が17症例,III群が5症例で,3群間に有意差が認められた。III群の症例の多くは非特異的症状を訴えていたために診断に時間を要した。III群の症例の専門以外の医師により診断された13症例のうち,外来担当医師間の連絡や専門医師への連絡が不十分であった症例が6症例あった。III群の症例のうち死亡症例は2例で,診断が遅れたために死亡した症例は1例のみであった。考察;I群の症例は,全例が典型的な自覚症状を訴え,大動脈解離と臨床診断しCTにより確定された。II群の症例は,専門医師が早期に診療した症例は少なかった。他疾患の除外の後,造影CTにより確定された。III群の症例は症状が非特異的で,診断が困難であった。結語;急性大動脈解離の救命率向上には,救急外来担当医師が急性大動脈解離と臨床的に診断し,確定診断のために適切な検査を指示する必要がある。専門医師が受診早期から参加できるようなシステム構築も不可欠であると考えられる。
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