褥瘡管理における近代的ドレッシング材使用と伝統的ドレッシング材使用の費用対効果に関するアクティビティ・ベースド・コスティング手法を用いた臨床的比較研究

2004 
近年, 日本の医療供給体制, 診療報酬制度に費用対効果の考え方が急速に広がりつつある. 特に, 褥瘡ケアにおいては減算システムが導入され, 真に費用対効果の高い褥瘡ケアの普及が待たれている. しかしながら, 褥瘡ケアに関する従来の費用対効果研究では, 使用する医薬品や医療用具など「ハードウェア」の費用分析が中心であり, 褥瘡ケアに携わる医師や看護師の人件費など他のコスト面は考慮されていなかった. その結果, 褥瘡ケアにおける費用対効果の解明は, 未だ不完全なものにとどまっている.このような背景のもと, 費用対効果の正確なデータを得るためステージIIとIIIの褥瘡患者に対してプロスペクティブな比較試験を実施した. 試験実施期間は2001年8月から2002年4月までで, 被験症例数はステージII, IIIの褥瘡患者計91症例であった. このうち, 13病院の83症例を対象症例として最終分析を行った.原価計算には, 日常の業務活動ベースの原価を算定するための手法として, アクティビティ・ベースド・コスティング手法 (Activity-Based Costing) を採用した. 臨床的効果の測定には, PSST (Pressure Score Status Tool) のスコアを採用した. 患者は, 1) 近代創傷ドレッシング材と褥瘡ケアアルゴリズムを使用するMC/A群, 2) 従来のケア手法 (軟膏とガーゼ) と褥瘡ケアアルゴリズムを使用するTC/A群, 3) 褥瘡ケアアルゴリズムを使用せず従来のケア手法 (軟膏とガーゼ) を中心とするTC/NA群の3群に分けた. 4) 体圧分散マットレスの重要性を考慮し, すべての症例に同類の体圧分散マットレスを使用した.その結果, MC/A群はTC/A群とTC/NA群よりも費用対効果が高いことが明らかになった. 従って, 近代創傷ドレッシング材と褥瘡ケアアルゴリズムの適切な活用が医療費を削減し, 臨床成績を改善し, 結果として費用対効果を高めることに貢献することを示唆した.
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