経心尖部大動脈送血, arch-first technique,両腔吻合を用い弓部置換を行った広範囲 Stanford A 型慢性大動脈解離の1例

2010 
症例は61歳女性.2005年4月に脳梗塞発症,右片麻痺となる.同年6月に右冠動脈有意狭窄に対してステント留置術を施行した.2006年10月にCTで上行大動脈起始部から弓部3分枝,両側大腿動脈にわたる真偽腔ともに開存する広範囲大動脈解離と診断された.また術前の冠動脈造影検査で左前下行枝の閉塞も認めた.以上より冠動脈病変を伴った広範囲Stanford A型慢性大動脈解離の診断で2007年2月に手術を施行した.本症例は腕頭動脈解離と右鎖骨下動脈高度狭窄があり,また左総頸動脈および左鎖骨下動脈も末梢まで解離していた.さらに弓部大動脈より末梢は真偽腔ともに開存し,腹部主要分枝が両腔から分岐しており,大腿動脈まで解離が及んでいたため,送血は両腔に行う必要があった.そこで手術は右房脱血,経心尖部大動脈送血および左大腿動脈両腔送血により体外循環を行い,冷却中の灌流不全防止に努めた.血行再建としてはY型人工血管を用いて弓部3分枝を最初に再建し(arch-first technique),ついで I 型人工血管を用いて末梢側は両腔に吻合し,偽腔にも灌流するようにした.つづいて中枢側吻合を行い,最後に大伏在静脈グラフトによる冠動脈バイパス術(CABG)1枝を行った.術後合併症はなく,CTでグラフトおよび弓部大動脈以下は両腔ともに血流良好で,術後18日目に独歩自宅退院となった.広範囲A型慢性大動脈解離の症例に対して臓器灌流不全防止のために送血部位の選択,再建手順および吻合方法を工夫して弓部置換を行い,良好な結果を得た.
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