臨床の部 ● 演題 9心臓手術後の持続血液濾過透析(CHDF)施行患者におけるニコランジルの薬物動態の検討

2011 
目的:ニコランジルを持続投与する心臓手術後で血液透析を施行されている患者 10 例を対象に CHDF 施行前後のニコランジルの血中濃度を測定し,CHDF 施行下での薬物動態を検討する。方法:心臓手術後の患者で,CHDF 開始 8 時間以上前から開始後 7 時間後まで最低 15 時間以上ニコランジルを 0.1 mg/kg/hr の用量で持続静注した。測定点は CHDF 開始前後に 30 分間隔で 3 点ずつ,それぞれ動脈ラインより採血を行い血中濃度を測定した。また,CHDF 開始 1 時間後の時点で,CHDF の脱血側,返血側,濾液からサンプルを採取し,ニコランジルのクリアランスを測定した。結果:10 例の CHDF 開始前のニコランジルの血中濃度は平均値で 85.4 ng/mL であった。また,CHDF 開始 7 時間後の時点では平均血中濃度は 118.7 ng/mL であり,CHDF 開始 1 時間後におけるニコランジルのクリアランスは平均値で 15.3 mL/min であった。考察:ニコランジルの至適な血中濃度は 40~300 ng/mL と報告されており,500 ng/mL まで上昇すると心拍数増加,血圧低下が出現するともいわれている。今回検討した症例の中では,1 例でのみ CHDF 開始後の血中濃度が 382 ng/mL とやや上昇していたが,特に副作用はみられなかった。他の 9 例では CHDF 開始前後とも血中濃度は 40~300 ng/mL の範囲にあった。全例で調査期間内に心血管イベントの発症はみられなかった。血液透析患者における CHDF 施行時のニコランジルの持続投与量は 0.1 mg/kg/hrでほぼ有効血中濃度にあると考えられた。また,無尿の透析患者に対して CHDF 開始までに平均33 時間ニコランジルを 0.1 mg/kg/hr で持続投与していたが,ニコランジルの平均血中濃度は85.4 ng/mL と有効血中濃度内に留まっており,過剰な蓄積はみられなかった。
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