2.組織・遺伝子診断:骨・軟部腫瘍におけるリキッドバイオプシー

2021 
リキッドバイオプシーは,血液などの体液サンプルを用いて,低侵襲かつ経時的なモニタリングが可能な次世代の癌病態解析法である.測定検体としては,circulatingtumor DNA(ctDNA),循環腫瘍細胞(circulatingtumor cells:CTC),エクソソームなどがあげられる.これまでに血漿中のctDNA を中心とした大腸癌,肺癌などの遺伝子変異解析が行われ,病勢モニタリング・薬剤耐性評価・術後再発予測における臨床的有用性が報告されている.しかし,骨・軟部腫瘍(肉腫)はその希少性と多様性の影響もあり,リキッドバイオプシーに関する知見が少ないのが現状である.肉腫の治療は,外科的切除,放射線治療,化学療法が行われるが,遠隔転移が重大な問題であり,生存率に大きく影響する.そのため適切な集学的治療を行うため,転移を早期に示唆する症例(転移しやすい症例)を検出する手法が求められるが,現状では画像検査によるスクリーニングに限られ,特異的な腫瘍マーカーを用いた検査法はない.そのため,診断,病勢評価,再発・転移予測を行ううえで,リキッドバイオプシーは重要な検査法となりうる可能性がある. 本稿では,これまで行われてきたリキッドバイオプシーの研究開発,また,われわれの経験を含めた肉腫におけるリキッドバイオプシーの現状を詳述する.
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